ワタシノタイヨウ
「甘えた顔して近づき、利用するだけ利用して、卒業したら、はいさよならってな。」


腕を大きく振り下ろし、感情的に大声で叫ぶ。


「オレは認めない。教師と生徒が本気で恋愛なんか出来っこないんだよ。絶対裏切られる……」


最後の方は消え入りそうな声で呟いた。


『今井先生…』


私の目の前で肩を落としうなだれる今井先生を見て、きっと過去に何かあったんだと思い、私は思わず手を伸ばした。


と、その瞬間……


「オレが壊してやる…」


突然顔を上げた今井先生は、伸ばした私の手を掴み引き寄せた。


『いやっ、やめて!』


強引にキスをしようと顔を近づけてくるのを、必死に抵抗する。


もみ合ううちに机の上に体を倒された私は、両腕を掴まれ身動きが取れなくなった。


「もう終わりだね。」


いつもの人懐っこい顔で笑う。
それが逆に恐怖を感じさせた。


『先生っ、青山先生助けて!』


私はこれ以上出ないってくらい
大声で叫んだ。


「いくら叫んでも彼は来な…」


=バンッ!=


「…っ!!」


ドアを叩きつける大きな音が部屋に響いた。


=バンッ!=


再び音がしたかと思うと、待っていた人の声が聞こえた。


「カスミ、カスミ、そこにいるんだろっ!」


『先生っ!助けてっ!』



「チッ…もう見つかっちゃったかぁ。」


今井先生は少し苛々した表情で、ドアの方を見つめると、私の腕を引き起き上がらせる。


そして、私を後ろから抱きしめるようにして押さえ込んだ。



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