ワタシノタイヨウ
あれから私は猛勉強を始めた。


放課後部活のない日は彼に勉強を教わり、夜は夕食の後部屋にこもり勉強に励む。


そんな私の姿を見たタツ兄が気味悪がっていた。


「カスミ具合でも悪いのか?」


『はぁ?なんでそうなるの。私元気だけど。』


「だって、お前勉強してるだろ?熱でもあるのかと思って。」


タツ兄は真面目な顔して私のおでこに手を当てる。


「タツミっ!カスミが真面目に勉強してるなんていい事じゃない。そうやってからかうんじゃないのっ!ベシッ!」


「いってぇ~」


お母さんに頭を叩かれ、タツ兄は頭を抑える。


私は笑いながらその光景を見ていた。


あまり得意とは言えない勉強も、クリスマスとご褒美の事を思えば頑張る事が出来た。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



テスト一週間前の最後の部活。


外はすっかり冬一色で、時折頬をかすめる風も痛みを感じるようになっていた。


足元には枯れ葉がカサカサと小気味良いリズムを刻み通り過ぎる。


「よっ、カスミ先輩!」


『あっ、ユウくん。今日も寒いねぇ。』


私が肩をすくめると、ユウくんは背中をバシっと叩いた。


「先輩ババアかよ。もっとシャキッとしろよ。」


そう言ってニカッといつもの笑顔を見せる。


『ちょっとユウくん。背中痛いからっ!』


走って逃げるユウくんを追いかけていると、ユウくんが急に立ち止り私は背中にぶつかった。


『いったぁ~。急に止まらないでよ。』


「あっ、わりぃ。」


『それより、どうしたの?』


ユウくんは背中を向けたまま、もぞもぞと話し出す。


「クリスマスはあいつと過ごすのかよ。」


『えっ?!』


「って、そうに決まってるよな。俺なに言ってんだろ。ごめん。」


『ユウくん…』


「ほら、もたもたしてんな。先行くからな!」


ユウくんはコートに向かって走って行く。


私はその小さくなって行く背中をただ見つめていた。


(ユウくん…ごめんね。)



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