ワタシノタイヨウ
『だって…わかんないんだもん』


小さい声でボソッと答えると、


「オレの授業って、もしかしてわかりずらい?」


彼は不安そうに聞いてきた。私は慌てて、


『そ、そんなことないです!私が物理苦手なだけで…』


私があんまり必死に言うので


「あ〜もういい。わかったよ。」


彼は私の言葉を遮るように顔の前に手を上げ、クスクス笑った。


(あっ、久しぶりの笑顔だぁ)


そんな事に感動して、顔が自然とにやけてしまう。


「それじゃ、まずここから。」


教科書を開き、丁寧に説明を始める彼。

私も必死に彼の話しを聞くんだけど…。


(なんか、顔近い‥)

(うっ、声が色っぽい‥)


集中しようとすればするほど、逆に意識してしまい、なかなか頭に入らない。


「…わかったか?」


一通り説明が終わると、彼は私の顔を覗き込むように見て聞いた。


(ヤバイなぁ…)


全然頭に入っていない私は、チラッと横目で先生を見て、


『えっとぉ、すいません。もう一回お願いします…。』


顔の前で両手を合わせてお願いすると、


「お前なぁ‥オレ自信失くなってきた。」


髪をクシャっとかき上げ、ハァ〜と大きくため息をついた。



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