ワタシノタイヨウ
私は彼が私のために買ってくれたジュースを手に、なんだかもったいなくて、なかなか飲めないでいた。

それを見て彼は少し不安そうに、


「それ、お前の好きなやつだよな‥」


私は彼が気にしてくれた事が嬉しくて、とっさに


『うん、大好き!』


と満面の笑顔で答えた。

その瞬間彼とバッチリ目が合い、なんだかお互い少し赤くなる。


ジュースの事を『大好き』と言ったのに…


(これじゃまるで告白したみたいなんですけど…)


私は恥ずかしくなり、ジュースにストローを挿し、一気に飲みほした。


ドキドキしながら横目でチラッと彼を見ると、もう気にしていないのか、またタバコを取り出し吸い始める。


しばらく沈黙が続き、私は何か話さなくちゃとあれこれ考えていると、ふといい事を思いつき彼に聞いてみた。


『先生、明日もここにいる?いつも勉強教えてもらってるから、お礼にここの整理、手伝ってあげるよ。』


私は彼の横顔を見ながらそう言うと、チラッと私の顔を見た彼は、窓の外へ視線を移し少し考えているようだった。


(余計なお世話だったかな‥)


私が少し後悔していると、彼はゆっくりこちらを向き、


「じゃあ、頼むよ。」


そう言って私の頭をポンッと叩いた。そして短くなったタバコを消すと、


「ほら、続き始めるぞ。」


と言って教科書を開き勉強を再開する。


(よかった。また明日会える♪)


半分断られるんじゃないかと不安もあったので、私は少しホッとした。


30分ほどして、今日の勉強は終わりになり、また明日来る事を約束して、私は彼のもとを後にした。



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