ワタシノタイヨウ
『先生…?あっ、もしかしてどこか痛いの?ケガした?』


動かない彼を見て心配になった私は、慌てて彼に近づき腕に触れようとした。


すると彼は、それを軽く払い、しぼり出すような声で、


「オレは……誰も…守れやしない……」


そう言って拳で床を殴った。


『えっ?何言ってるの先生‥?私たった今先生に守ってもらったよ。』


私は訳がわからずに彼を見つめていると、


「……守れなかったんだ。」


そう力無く呟くと立ち上がった。


そして私の横を通り過ぎると、


「もう帰れ…」


と冷たく言い放つ。


振り返った私の目には、窓から空を見つめる彼の姿が目に入った。


『先生…何かあったの…』


私はやっとの思いで言葉にする。声は震えていた。


でも彼は、何も答えようとはしない。


私は耐えられなくなり、今まで胸にしまっていた事を彼に聞いてみた。


『先生はそうやって、いつも空を見てるけど、何か理由があるんでしょ…?』


私が大きな声で彼の背中に向かって叫ぶと、彼がゆっくりこちらを向いた。


私は立ち上がり、彼の目を真っすぐ見つめ続ける。


『先生が泣いてるの見ました…。何を1人で苦しんでるの?私、先生の力になりたい。』


一気にそう言うと、私の目から涙がこぼれ落ちた。



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