ワタシノタイヨウ
彼は私の涙を見て、手が一瞬顔に伸びかけた。


でもすぐにそれを握りしめると、彼は私を見つめ、


「…お前には関係ない。これ以上オレにかかわるな。オレの心の中に入ってこないでくれ!」


珍しく少し取り乱したように、彼は声を荒らげて言った。


私はもう後戻りはできず、


『関係なくない。私は先生の事が好き。だから…』


私は彼に気持ちを伝えていた。

それを聞いた彼は、私の言葉を遮るように、


「オレは誰も好きにならない。ずっと1人で生きて行くんだ。ずっと1人で……」


吐き出すようにそう言う彼。


『なんでそんな寂しい事言うの。人は1人じゃ生きてけないよ‥。私じゃダメ?私じゃ先生を支えてあげられない?』


溢れ出る涙を拭いながら、一生懸命言う私の姿を、彼は苦しそうに見つめていた。


そして一度瞳をギュッと閉じ、再び開くと、私に近づき腕を掴む。


「…帰れ。もう来るな。」


そう彼は言って、腕を引っ張り歩き出す。


私は抵抗しようと腕に力を入れてみるけど、びくともしない。


カバンを私に渡し、ドアの前まで連れて来ると、横目でチラッと私を見てからドアを開けた。


そして無言のまま、私は廊下へ放り出される。


『先生…』


私は彼を見るが、彼は目を合わそうともぜずドアを閉め、中から鍵をかける音が聞こえた。


私はドアの前でしゃがみ込み、しばらくその場で泣いていた。



(先生を苦しめているものはいったい何…?)


いつも彼に近づけたと思うと一瞬にして突き放される。


彼の抱えている苦しみを癒してあげたい…。


でも彼の心は固く閉ざされ、近づくものを寄せ付けないでいた。



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