ワタシノタイヨウ
しばらくドアの前で泣いていた私は、もう開くことのない扉を見つめ諦めて立ち上がった。


とめどなく溢れ出る涙を、何度も拭いながら廊下を歩いていると、曲がり角で誰かとぶつかった。


力無く歩いていた私は、その衝撃でよろけてしまい床に倒れこむ。


「ごめん。大丈夫?」


後ろから、心配そうに謝る声が聞こえた。


泣いているのを知られたくなかった私は、相手の顔を見ずにふらっと立ち上がり、


『すみません…大丈夫です。』


と言ってすぐその場を立ち去ろうとした。


でもその瞬間ガッと腕を掴まれ、その人の方へ引っ張られる。


「鈴原?……どうしたの?」


目の前で今井先生が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


「えっ泣いてるの…もしかして今の痛かった。」


そう言って少しオロオロしていたが、私が何も言わずただうつむいているのを見て、違う事を悟った彼は私の手を握り、


「とりあえず、こっちへ…」


と言って私の手を引いて歩き出した。


いつもの私なら、腕を振り切って逃げてしまうところだけど、今の私にはそんな気力も残っていなかった。



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