ワタシノタイヨウ
移動の為、ツキコと廊下を並んで歩いていると、向こう側からこちらに向かって歩いて来る彼の姿が見えた。


私はとっさにうつむき、ツキコの制服の裾をギュッと掴む。


少しツキコの横に隠れるようにして彼とすれ違った。


「大丈夫…?」


ツキコは心配そうに私の顔を覗き込んだ。


『うん、平気…』


私は彼女に心配させまいと、無理やり笑顔を作って見せる。


そんな私を見てツキコはため息をつき、何も言わずによしよしと私の頭を撫でた。


私は彼女の存在に優しさに、かなり救われていた。


私はふと思う…。


(彼を救ってあげる人はいるの…?)


私は自分がこれから彼の為に、何をしてあげられるのか解らないでいた。


彼の苦しみを少しでも取り除いてあげたい。けど…そこまで踏み込んでしまっていいものなのか…。


でも、このまま彼をほっとく事は私には出来ない。


私がこのまま何もしなかったら、誰が彼を救ってあげるの?


ううん、私じゃ彼を救う事は出来ないかもしれない。


この先、他の誰かが彼を救ってくれるのかもしれない…。


それでも…、今私が何もしないでいるのはいやだった。


やれるだけの事をして、それでもダメなら諦めもつくけど…。


私はまだ、彼の為に何もしていない。


彼が何に苦しんでいるのかさえ知らない。


(先生の笑顔をもう一度見たいよ…)


彼の笑った顔を思い出しながら、私はやっと決心が付く。


もう一度彼に会って話してみようと心に決めたのだった。



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