ワタシノタイヨウ
「サエの笑顔を見てると、真っ暗だったオレの心に太陽のような暖かい光が射した。ある時思ったんだ。彼女はオレの太陽だと…。」


彼は再び空を見上げると、太陽を愛おしそうに見つめた。


「なんで彼女はいつもオレの隣りにいたのか。サエは気づいてたんだ。オレが笑ってない事、孤独だった事に。でもいつの間にかオレは心から笑えるようになってた。サエのおかげで…。」


タバコの灰が地面に落ちる。


「そしてオレはサエと言う太陽を手に入れた。彼女といると生きてる事に意味をもつ。オレ達はいつも一緒で、この幸せはずっと続くと思ってた……」


彼の声はだんだん小さくなった。


短くなったタバコを地面に捨てて足で消す。


そして空を見上げたまま、目を閉じ彼は話しを続けた。


「無事教師になったオレは、赴任先も決まり後は卒業を待つだけだった。ある日サエが海が見たいと言い、オレ達はバイクで海に行った。もちろん後ろに彼女を乗せて…。」


目を閉じたまま、ゆっくりうつむく彼。


「サエは海が好きだった。オレ達は地平線に太陽が沈むまでずっと海を見ていた。そして沈んでいく太陽にオレ達は誓ったんだ。ずっと一緒にいようと……。」


私の胸はズキンっと痛んだ。


彼に愛されているサエさんがとても羨ましく思えて…。


彼を見るとさっきまで閉じていた瞳を開き、真っすぐ太陽を見つめていた。


「その帰り…途中で雨が降り出し視界も悪かった。そこに、居眠り運転のトラックがオレ達のバイクに突っ込んできて……。」


彼は私の手をギュッと握る。


私も震える手で、彼の手を握り返した。



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