ワタシノタイヨウ
「オレは咄嗟によけたんだ。でもよけきれず……ぶつかった衝撃で体が宙に舞い…その瞬間オレはサエを探してた。そして彼女を見つけたオレは必死で手を伸ばした。けど……届かなかった。」


彼は自分の手を太陽にかざし見つめていた。


私の目からは涙が溢れている。


「そのままオレ達は地面に打ちつけられ……目が覚めた時、オレは病院のベットの上だった。オレは生きていた。でもサエは……。」


彼と私の目から、涙がこぼれ落ちた。


「なんで…サエが…なんで…オレだけ生きてる…なんで……」


彼は震える声で何度も「なんで」と繰り返す。


彼にこんな過去があったなんて…


私はようやく彼の苦しんでいる理由を知った。


それはあまりにも辛い出来事で…


私の胸は締め付けられ苦しくなる。


「オレは彼女の最後をみとる事も送る事も出来なかった。目が覚めた時にはすべて終わってたんだ。そうあの時…必死に伸ばした手が彼女に届かなかった…その時見たサエの姿が最後だった…。」


彼はこの一年ずっと苦しんできたんだ。


その苦しみがどれだけのものなのか…大切な人を失った事のない私には想像もつかなかった。



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