ワタシノタイヨウ
「オレは太陽を失った。やっと手に入れた光を、守る事が出来なかった。もう二度と取り戻す事は出来ないんだ。だから…ずっと一緒にいようと彼女と誓ったあの時のままオレの時間は止まってる。」


彼の時間はサエさんと一緒に過ごした幸せな時のまま止まっていた…。


だから私が彼の心に近づこうとするたび、突き放されていたんだ。



時間が動き出さないように……。



「サエ一人を死なせてしまった…オレはもう誰も好きにならない。サエと共に一人で生きて行くと決めたんだ…。」


そう言って彼は黙り込み、つないでいた手をそっと離した。





ずっと黙って彼の話しを聞いていた私は、今の自分の素直な気持ちを言葉にしていた。


『サエさんは…先生と出会った事一緒に過ごした日々、海を見に行った事、そして事故にあった事さえ全部…きっと何ひとつ後悔なんてしてないと思う…。』


私は太陽を見ながら話していた。



「お前に…何がわかる……」



彼は消え入りそうな声で呟いた。



私の胸はズキンと痛んだけど、どうしても聞いて欲しくて、話しを続けた。


『サエさんの本当の気持ちはわからないけど…それでも、私は彼女と同じ気持ちを持ってるから…』



サエさんが彼を好きだったように私も彼の事が大好きだからわかる事もある…。




『サエさんは自分のせいで先生が苦しんでるって知ったら、すごく悲しいと思う。』


「オレはっ…苦しんでなんてない!」


言葉とは裏腹に辛そうな声で言い放つ。


私はうつむいている彼の方を向き話しを続けた。


『誰も好きにならない事が、一人で生きて行く事がサエさんの為になるの?彼女はきっとそんなこと望んでなんかないよ。
だって…あなたが生きててくれてよかったってきっと思ってるはずだから…。』



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