ワタシノタイヨウ
私は彼に渡されたメガネをかけてみる。


『ホントだ……』


彼は再びパソコンを打ち始めていた。


『なんか…ずるい……』


その言葉で彼の指が止まる。


「賢いって言ってもらいたいね」


そう言って私の方をくるっと向くと、本日2本目のタバコに火をつけた。


『…ずる…賢い……』


私はボソッとそう呟く。


それを聞いた彼はゴホっと一瞬むせ、私をチラッと見てから


「お前、それうまいね。」


と言ってクックックと笑い出した。


そんな彼を見て私も一緒に笑う。


『じゃあ、みんな騙されてるんだね〜』


「おい、人聞きの悪い事言うなよ。別に騙してないし。でも、みんなには内緒だぞ。」


少し照れたようにそう言う彼の顔がかわいくて、私はしばらく笑いが止まらなかった。


そして、また二人だけの秘密が増えた事が嬉しかった。


「お前、笑いすぎ。」


彼は私の頭を軽く押す。


『ごめんなさい。これで許して』


私は笑いをこらえながら、カバンから缶コーヒーを取り出し彼に渡した。


「おっ、気が利くな。少し休憩すっかな。」


開いていた本を閉じて横にずらしそこにコーヒーを置く。


タバコをフーっとひと吐きするとその手で缶を持ち、一口コーヒーを飲んだ。


その仕草がかっこよくて、私はジュースを片手に、ボーっと彼を見つめていた。



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