ワタシノタイヨウ
それに気づいた彼は、私をからかうように、


「…なに見とれてるんだよ。」


と言ってニヤリと笑う。


私はハッと我に返り、顔をそらしながら


『み、見とれてなんかいません』


慌ててジュースにストローをさそうとするけど、手が震えてうまく刺さらなかった。


「動揺してんじゃん。」


彼はそう言ってタバコを持った手で私の事を指差し笑っている。


(もしかして、からかって楽しんでる!?)


私は彼をじろっとにらんだ。


今度は彼が顔をそらし、外に向かってタバコをふかしている。


でも私は、からかわれるのも悪くないと心の中で思っていた。



しばらくしてタバコを吸い終わった彼は、仕事を再開した。


『ねえ先生、この部屋全然整理出来てないね。むしろ、ひどくなってない?』


私が部屋を見渡しながらそう言うと、


「ああ…とりあえず箱の中の物出してみたんだけど…なんかめんどくなってそのまんまだ…」


『ふ〜ん。私整理してあげようか?暇だし。』


彼はしばらく黙ってパソコンを打っていたが、急に何かを思い出したのか私の方を向いて、


「お前、部活は?」


『えっ!?』


「最近行ってないだろ。」


そう言って真剣な顔でじっと私を見つめた。


『うっ、行ってますよ……たまに……』


私は曖昧に答えると、少しうつむいた。


ホントは前回この部屋に来た日以来、何もする気がしなくて、ずっと部活にも行ってなかった。



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