ワタシノタイヨウ
放課後部室に行くと、


「あ〜カスミだぁ。久しぶりじゃん。やっとやる気になったの?」


と先輩から、突っ込まれた。


『すいませ〜ん。しばらく休んじゃって…』


私がペコリと軽く頭を下げると


「あぁ、気にしなくていいよぉ。うち基本自由だし。」


そう言ってみんなで笑った。


私が少しホッとしていると、


「そういえば、ユウ君が会いたがってたよ〜。」


先輩がニヤリと笑う。


『えっ、ユウ君が……?』



神尾ユウ。今年入った一年生。


後輩だ。


うちのテニス部は男女仲がいい。


新入生の歓迎会を一緒にやった時なんだかなつかれてしまった。




テニスコートへ向かって歩いていると、後ろから声がした。


「あぁ〜カスミ先輩だぁ!」


振り向くと、ユウ君が走って来るのが見える。


息を切らしながら私の所まで来ると、


「先輩…なにずっと…部活サボってんだよ。」


ハアハアいいながらユウ君は大きな瞳で私を見つめた。


(いつも思うんだけど、子犬みたいでかわいいんだよなぁ。)


少し茶色かかったふわふわの髪の毛に、黒くて大きな瞳。


『ごめん、ごめん。』


私がユウ君の頭をポンポンっと軽く叩き笑顔で謝ると、彼は少し頬を赤く染め、


「じゃあ、後で勝負しようぜ。勝った方がジュースおごりな。」


『え〜、それって私のおごり決定じゃん。』


彼は一年生ながら、なかなかの実力者だった。


私は一度も勝った事がない。


「サボってばっかいるからオレに勝てないんだよ。先輩弱いからいいカモ。」


『ひっどぉい!』


ケラケラ笑うユウ君を見て、私が背中を叩こうとすると、それをひょいと避けて、


「じゃあ後でな。逃げるなよ。」


ニコニコしながら私を指差し、ユウ君は男子テニス部の方へ走り去っていった。



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