ワタシノタイヨウ
ふと彼が仕事をしている机を見ると、この前までなかった卓上型の扇風機が回っているのに気がついた。


『先生それいいなぁ。』


彼に向かって風を送っている扇風機を指差し、私はアイスをかじりながらうらやましそうに彼を見つめた。


「あぁこれ。こんなもんでもないと、ここで仕事するのつらいからな。…ほら。」


すでにアイスを食べ終え、一服しようとしていた彼は、扇風機を手に取ると私の顔の前に持ってきてそれを私に渡した。


『わぁ〜涼しいっ!これがあればもう私が、うちわであおがなくても平気だね。あれ結構腕しんどいんだよねぇ。』


「お前なぁ、オレが無理やりやらせてるみたいな言い方するな。」


タバコをふかしていた彼は、じろっとこちらを睨むと、私の頭を小突いた。


『え〜違ったっけぇ〜。』


私がとぼけて笑っていると、


「ふ〜ん。そうゆう態度をとるなら…」


彼は手に持っていたタバコを口にくわえると、私が持っていた扇風機を奪い取った。


そして風力最大にすると、扇風機を私の頭に向ける。


私の髪の毛は舞い上がり、ぐちゃぐちゃになってしまった。


『きゃあ〜すいませんっ。』


私が慌てて謝ると扇風機のスイッチを止めた彼が笑いながら、


「わかればいい。ってお前…クッ…頭凄いぞ。」


『もう、先生がやったんじゃん。そんなに笑わないでよ〜。』


お腹を抱えて笑っている彼を睨みつけ、私は慌ててかばんから鏡を取り出し髪の毛を整える。


最近は結構ふざけあったりしていて、彼もだいぶ素の姿を見せてくれるようになっていた。


私がむくれながら髪の毛を整えていると、


「お前がとぼけるから悪いんだ」


口調とは裏腹に微笑みながら私を見つめると、私の髪の毛を優しく撫でた。



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