ワタシノタイヨウ
私の身体は震えていた。


私は壁に寄り掛かると口に手をあてて、そのままその場にしゃがみ込んでしまった。


目には涙が溢れてきて……



（ユウ君って…サエさんの弟だ）



私は声が出そうになるのを、手で必死に押さえた。



「もう二度と、オレの大切な人を奪うなっ！」



ユウ君は掴んでいた手を勢いよく離すと、ドアに向かって走り出した。


彼は後ろによろけて、ガタンっと派手な音が鳴る。


私はハッとして慌てて立ち上がると、震える足で急いでその場から離れた。


ガラっと勢いよくドアが開く。


ユウ君は私が隠れている方とは逆へ走り去って行った。




私は廊下に座り込み、震える身体を両腕で押さえる。


（赴任先の学校にサエさんの弟がいたなんて……）




あれは事故だった…。


彼には防ぎようがなく、彼のせいではない…。


それでも……


ユウ君は、サエさんが亡くなったのは彼のせいだと思っている。



ユウ君は彼の事を許していない。



彼にとってあまりにも残酷な現実を目の当たりにした私は、彼の気持ちを思うと、涙が止まらなかった。



この事実を知ってしまった私は、この先どうしたらいいのか……



私はしばらくその場から動く事が出来なかった。



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