ワタシノタイヨウ
部活中の私はユウ君が気になって集中できずに、そちらをチラチラ見てばかりいた。


ユウ君はいつも通り、みんなと楽しそうに笑っている。



(あっ…)


一瞬ユウ君と目が合った。


ユウ君も「あっ」という表情をしたあと、少し照れた顔で私に向かってニッコリ笑う。



(あの笑顔されちゃうと…弱いんだよなぁ…)



私もとりあえず笑顔で返したけど…うまく笑えていたかは自信がなかった。




「鈴原〜ぼーっとしてないで、コート入れぇ。」


今井先生の大きな声が響く。


『はぁ〜い!』


私は慌ててコートまで走った。


「昨日サボった分も、しっかり動けよ〜」


『わかってますよぉ。』


今井先生の前を通り過ぎながら、ちょっとむくれて見せる。


彼は笑いながら、私が通り過ぎる瞬間小声で呟いた。



「オレ見ちゃったんだよね。」


『…えっ?』


私は先生の前で足を止める。



「神尾と…抱き合ってたでしょ」


私の耳元で囁いた。


『えっ、それは違っ…』


「ふぅん、でもオレ見たし。」



今井先生はいつもと違っていた。


前に一度聞いた事のある喋り方だった。


普段は自分の事を「僕」と言うけど、今は「オレ」と言っている。


なんとなく嫌な感じがして、ふと頭によぎった事を口に出してしまった。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
< 83 / 156 >

この作品をシェア

pagetop