ワタシノタイヨウ
北海道で家族と楽しく過ごし、自然とも触れ合い、十分気持ちが癒されて帰ってきた私は朝からご機嫌だった。


今日から部活が始まるからだ。


今井先生には会いたくなかったけど、青山先生には1秒でも早く会いたかった。


私は部活が始まる前に会いに行こうと、少し早めに起きていた。


とりあえず顔を洗いリビングへ行くと、


「カスミ、なんか顔ニヤけてるけど、どうしたんだ?」


トーストをかじりながら私の兄・タツミ(大学3年)が不思議そうに私の顔を見つめている。


『えっ!?別に何にもないけど』


慌てて両手で頬に触れてみる。


「そうかぁ。珍しく早起きだし、デートにでも行くのかと思った」


『ちょっ何言ってんの!そんな相手いないし。』


「お前、まだ彼氏いないのかよ。可哀相な妹……」


コーヒーをすすりながら、大袈裟に悲しそうな顔をするタツミ。


『もう、タツ兄には関係ないでしょ。そっちこそ珍しく家にいるけど、彼女に振られたの?』


イヤミたっぷりに言い返す。


「ば〜か。今日はこれからバイトなの。デートは夜から。」


タツミはニヤリと勝ち誇ったように笑ってみせた。



「タツミっ早くしなさい!バイト遅れるわよ。」


キッチンで洗い物をしていた母に声をかけられ、タツミは時計をちらっと見る。


「あっ、やっべぇ…」


慌てて立ち上がったタツミは、私の横を通り過ぎる瞬間髪の毛を、わしゃわしゃっとして、


「早くいい男見つけろ。」


そう言って玄関へ消えていった。


『大きなお世話……』


ボソッと呟いた私の声はタツ兄にはもう届かなかった。



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