ワタシノタイヨウ

『あっ…あの、これは…』


今井先生は私の首に回した腕を離そうとせず、ニコニコしている。


私は誤解されたんじゃないかと焦り、慌てて何か言おうと試みるが上手く言葉が出てこなかった。



慌てふためいている私と、今井先生を交互に見ながら、


「おまえら、こんなとこで何してるんだ…」


彼に怪しげな視線を向けられる。



(あぁぁ、誤解だよぉ先生…)



私がうなだれていると、


「見られちゃいましたかぁ。僕たち付き合ってるんですよ。秘密にしてて下さいね、青山先生。」


今井先生はあっけらかんとそう言い、両腕でガバッと私を抱きしめた。



『きゃあ、な、何するんですか、離して下さい!』


びっくりした私が必死にもがいていると、



「ふざけるのもそのへんで…」



青山先生は私の肩を掴んで、強引に今井先生から引き離した。



「やっぱり嘘ってばれました?」



悪ぶれるでもなく、今井先生は楽しそうに笑っている。


そんな今井先生の事は無視し、彼は私の顔を覗き込んだ。


『大丈夫か。お前こんなとこで何してたんだ?』


私は彼の顔を見てほっとしてしまい、なかなか言葉が出てこなかった。


「青山先生に会いにきたんだよな鈴原は。」


私の代わりに今井先生が答える。


そして私の頭の上に手を置くと、優しく撫でた。


「じゃあ後は任せましたから。」


今井先生は青山先生の肩をポンと叩き、私に向かってニコっと笑うと、そのまま職員室の中に消えて行った。



「まったくあの人は…」


今井先生の背中を見つめながら、呆れたように青山先生が呟く声が聞こえた。



*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*
< 97 / 156 >

この作品をシェア

pagetop