ワタシノタイヨウ
「鈴原、オレに何か用か…。」
彼はうつむいている私の肩に手を置きながら、あまり感情のない声で聞いてきた。
そんな彼の態度に少し胸が苦しくなる。
『えっと、先生ずっとあの部屋に来ないから、どうしたのかと思って…』
私はなんとか言葉を絞り出し、ちらっと彼を見た。
「………」
彼は何か考えているのか、床に視線を落としたまま黙っている。
そして、しばらくして口を開くと
「とりあえず、ここじゃあれだから…」
そう呟くと、私の背中を軽く押しスタスタと歩き出した。
私は黙って彼の後について歩く。
いつもの部屋へ入ると、むあっとした空気が部屋を支配していた。
「あっちぃなぁ…」
彼はすばやく窓際まで行くと、すべての窓を開ける。
久しぶりに回るであろう、卓上扇風機のスイッチを入れると椅子に腰を下ろした。
ポケットからタバコを取り出し火をつける。
私はただじっと彼の行動を見つめていた。
そんな私に気づいた彼は、
「座れば…」
そう言って椅子を指差す。
私はその言葉にしたがい、静かに椅子を引いて座った。
二人の間には、いつもと違う空気が漂っている。
彼は黙ったまま、うつむいている私を見つめていた。
言葉を選んでいるのか、なかなか口を開かない。
私は大きくなる不安に耐えられなくなり、先に話しを切り出した。
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