ワタシノタイヨウ

『先生…もしかして、私の事さけてます?』


一瞬彼のタバコを持つ指がピクッと震えた。


そして、窓の外に視線を移して静かに話し出した。


「あまり一人の生徒と頻繁に会うのは、教師としてよくないと思ってな…」


(教師として…)


わかっていた事とは言え、彼の口から「生徒と教師」と言う一線を引かれると切なくなる。


(でも、なんで急に…)


お盆前までは特に変わった様子はなかったと思うけど……


『他の先生とかに何か言われたんですか…?』


私の声は少し震えていた。不安で胸が押し潰されそうになる。


「いや、まだ言われてない…」


私はちょっと安心した。彼の立場が私のせいで悪くなるのがやだった。迷惑だけはかけたくない。


それでも、急に何故?と言う疑問が頭をぐるぐると回っていた。


『じゃあもう先生と話したくなっても、用がなきゃ会いに来ちゃダメって事ですか…?』


「まあそうゆうことになる…な」


『だって今まではよかったじゃないですか…』


「それは…オレが軽率だった…」


彼はタバコを吸いながら、空を見つめ話している。一度もこちらを見て話さなかった。


私は納得がいかずしばらく考えこんでいた。


そして…ふとある事に気づく。


(もしかして、ユウ君の事が関係してるの…?)


私があの日二人の話しを聞いてしまってから、その後私は先生と会っていなかった。


私が知ってしまった事は、二人とも知らないはず…


でも……


私はユウ君の言葉を思い出す。



【もう二度とオレから大切な人を奪うな】



もしかして、ユウ君の気持ちを知って、私の事を遠ざけているのかも……


ユウ君からサエさんを奪ってしまったと思って……


そう考えると、急に彼が私をさけ出した事にも納得がいった。



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