本当の愛を知った日
八章 伝わってくれよ


紗結と敦史は無言のまま歩き続けた。

繋いだ手が気まずさを際立てた。


「帰ろっか…」


敦史が小さく呟いた。

紗結は下を向く。


二人は一言も会話を交わさないまま、
敦史の家へと向かった。


帰っている間、ずっと敦史は考えていた。


紗結のことを俺は信じてる。

俺に言ってくれた“好き”という言葉に偽りはない。

そう感じてるのに。


なんだろう?

この募る不安は。


あの優という男に、紗結を取られる気がしてならなかった。


絶対に紗結は渡さない。

渡したくない。

紗結が大好きでたまらない。




< 135 / 210 >

この作品をシェア

pagetop