ひまわりの丘


蒼太君が連れてきてくれたのは、小奇麗な和食屋さんだった。


「なにかあった?」


窓から見える庭の木々をただ眺めていた。不意に問いかけられ蒼太君に顔を向ける。


「え……どうして?」

「なんとなくね……由那ちゃんとナナちゃんと、隼太の間で何かあったのかなって」


湯気の向こうには蒼太君の柔和な眼差しがあって。彼のその温かい優しさに触れると、あたしの心は安らぎを感じる。

でも、これは決して“恋”ではない。そういう感情ではないってわかってる。

ごめんね………心の中でそっと呟いた。

蒼太君がいない間に隼太と約束をしておいて、でもこうやって逃げ場にしてる。

都合いいよね、なんか……。

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