ひまわりの丘


帰りの車の中での私達は、いつもより会話が少なかった。

家の近くまで来たところで蒼太君が言った。


「俺、春になったら東京に戻ろうかと思って」

「東京へ?」


そして車を停めた彼は、真っ直ぐ前を見つめたまま続けた。


「あいつも今描いてる絵が完成したら、また旅に出るんじゃないかな。去年も東京にいた時もそうだったけど、日本に戻ってもせいぜい二ヶ月しかいないんだ、いつもは。でも今回は、あいつも俺と同じ理由で足止めくらってるのかな……」


家の前まで来ていた。

蒼太君の視線を辿った先には、玄関前の石段に座り込む人影があった。

背中を丸め俯いている姿は、やけに小さく目に映る。

その横にはヘルメットが二つ並んでいて、傍らには一台のバイクが停まっていた。

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