ひまわりの丘
玄関の前まで来たあたしは、コートのフードを脱いだ。
体に付いている雪を手で払いながら、丘の上に視線を向ける。
アトリエに明かりが点っているのが確認できた。
「そんなに急がなくたっていいじゃないっ」
自然とそんな言葉が、口をついて出ていた。
早く仕上がったらその分、早く出て行くことになるのに……。
家に入って、音を立てないようにドアを開けた。
手探りで電灯のスイッチを押し、振り返ると ――
「……サキさん?」
あたしの目に映ったのは、台所の床に横たわるサキさんの姿。
「サキ、さん……?
―― サ、サキさんっ!?」
慌てて駆け寄って名前を呼んだ。
だけど、いくら揺さぶっても返事はなかった。