ひまわりの丘

「からかうはずないじゃん。
由那こそ、本気で言ってんの?」

「本気に決まってるじゃない!」


言った後で固く唇を結んだ。気を抜いたら涙がこぼれそうだったから。

こんな強気な態度って、全然可愛くないよね?
わかってる。わかってるんだけど……

『行かないで』なんて言えない。

でも、お願い。
もうちょっとだけ、ここにいてよ?


「でも、もう戻るって伝えてあるからさ」

「描いてよ?」


描いてくれるなら、その絵が完成するまでに心の整理するから。


「連絡して、訊いてみないと」

「お願い! お願いだからっ」


袖口にギュっとしがみついた。

描き終わるまでには、ちゃんと送り出せるようになるから。

だから……


「わかった。とりあえず電話してみるよ」

< 167 / 212 >

この作品をシェア

pagetop