ひまわりの丘

「一年前の3月、僕の勤め先の病院で君のお母さんと会った。17年ぶりの再会だった」


その人は、そう語り始めた。

沙織さんに『高校を辞めて北海道へ行ってほしい』と言われたのが、ちょうど一年前の3月のことだ。


「僕が高校三年の時、彼女は担任の教師だった。
真面目で生徒思いの、とても良い先生だったよ」


沙織さんが教師をしていたなんて初耳だった。

学校で教鞭をとっている姿なんて、想像もできない。


「十七年前の同じく3月、僕は彼女のアパートの近所にあった喫茶店で、彼女のことを待っていた。卒業式が終わったら、そこで会う約束をしていたんだ」

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