ひまわりの丘

「彼女の病名はね、

……乳癌、だ」


……乳癌 ――?

知っている単語なのに、まるで初めて耳にしたかのようだった。

……ガン?
沙織さんが……?


その言葉が全身に巡り、それからゆっくりと溶けだすように、意味を解釈していく。

どう受け止めたら、いいんだろう。頭の中が、どんどん白く塗り潰されていくようだ。


「病院にかかるもっと前から、自覚していたようだよ。

自分が入院している間に、君の面倒を見てくれる、信用のできる人間を探していたらしい。

そこで頼まれた僕が、いろいろ考えて辿りついたのが、お祖母ちゃんの所だったんだ。
話をすると、お祖母ちゃんはすぐに了承してくれた。

そして、その話を彼女にしたら『出来るだけ娘と近い場所で治療したい』と言われた。

そこで僕は、旭川の医大で外科医をしている大学時代の先輩に連絡をとって、入院の手筈をとったんだ。

以上が、君が北海道へ来ることになった経緯だよ。

……だけど、僕が伝えたいことは、あと二つあるんだ。

このまま続けてもいいかな?」


あたしは無言で頷いた。

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