ひまわりの丘
「ひとつは、君が知らない、君が生まれた時の話だよ」
あたしが、生まれた時の……?
「十七年前、学校を退職して田舎に帰った彼女が実家の両親に妊娠していることを告げると、ひどく反対されたらしい。
だけど頑なに中絶を拒み、反対を押し切って君を産んだ。
その君を手放すことになったのは、君が3歳の誕生日を迎える直前のことだった。
仕事の帰りに君を迎えに保育所へ寄ると、『先程、お祖父ちゃんが迎えに来ましたよ』と言われた。
でも、家に帰っても君はいなかった。
両親に訊いても何も答えてはくれない。何度も何度も問い詰めた挙句に一言、告げられたらしい。
『施設に預けた』って」
「……」
「それから彼女は、あちこちの施設を手あたり次第探し歩いた。
だけどどんなに探しても、君は見つからなかった」