ひまわりの丘

離れた場所から、賑やかな声がする。

運ばれてくる料理、グラスの音、話し声……。

喪服姿の人達が、テーブルを囲んでいる。

“通夜振る舞い”という言葉を、松江のお祖母ちゃんが亡くなった時に教えてもらった記憶がある。

通夜の後に、親族等でお酒を飲んだり食事をしたりして、賑やかに過ごすんだという。

視線を戻すと、彼は話の続きをしだした。


「そんなことがあって、その後に彼女は実家を出た。

しばらくは田舎にとどまって君を探したが、島根県内の施設をあたっていく内に、関東方面にいるとの情報を得た。
そこで東京へ戻り働きながら、なんとか君を取り戻したい一心で、手を尽くし続けた。

そして沙織さんが君を見つけだしたのは、7年も経ってからのことだったんだってね。

その話を聞いて僕は、申し訳なく思った。

知らなかったにしても、戸籍には載っていなくても……

僕は、君の父親なんだから」

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