ひまわりの丘


「じゃあ次は、卵を割ってくださいな」

「はい」

「由那ちゃんは手際がいいのねぇ」


台所にサキさんと並んで立つ。こんなこと沙織さんともしたことがない。

朝食を食べながらサキさんは、いろんな話をしてくれた。

十四年前にお祖父ちゃんが亡くなったことや、その後でこの家を息子さんが建ててくれたこと。その息子さんと家族は東京に住んでいること。

男手が必要な時は、ジンさんやマモルオジサンが助けてくれること。
キョウコさんはとってもいい人なんだけれど、ちょっと食べすぎなのが心配なこと等……。


「みんなにはいつもお世話になってばかりなの。でもやっぱり一人は時々寂しくなるのね。だから、あなたが来てくれて本当に嬉しくて」


そう言って笑うサキさんの瞳は、とっても優しい。
それに80代にはやっぱり見えないな。若々しくて可愛らしいから。


「由那ちゃん、あなたマサキちゃんと ――」


サキさんがなにかを言いかけた時、玄関の扉が開く音と共に声がした。


「サキさ~ん!」

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