ひまわりの丘

でも彼は、そっかぁと呟いて

「えっとね ――」

と、左の掌に右手の人差し指でなぞりだした。


「クスノキは“木ヘン”に“南”のこれ。ソウタのソウは“草カンムリ”に“倉”。タは太いって字ね。
楠 蒼太です、どうも。由那ちゃんっていくつだっけ?」

「16です」

「マジ!? じゃ、言うの止めよっかな」

「なにを?」

「俺の、年」


なんて、わざとに拗ねた真似をするから、ちょっと責めたくなった。


「えーっ! 訊きたい!」

「……ハタチ、なんだ」

「なぁんだ。全然若いのに。どうしてすぐ言わないんですかぁ?」

「だって16って反則でしょーっ」


二人でコロコロと笑い合っていたら急に思いだして、あたしは尋ねることにした。


「あの、マサキって誰ですか?」

< 31 / 212 >

この作品をシェア

pagetop