ひまわりの丘
【恋の予感】
6月。
ここに来て一ヶ月以上が過ぎ、サキさんとの暮らしにも慣れてきた。
サキさんはもちろん、周りの人たちは本当にみんないい人ばかりで、あたしは毎日“幸せ”を実感している。申し訳ないほどに。
あれから誰にも、あたしの父親について訊くことはしなかったし、蒼太君との間でその話題に触れることもなかった。
彼はきっと、気づかってくれてるんだと思う。
「サキさん、ひまわりが咲くのっていつ頃?」
あたしの問いかけにサキさんは、草むしりをしていた手を休めた。
「7月に入ったらチラホラ咲きはじめてね。月の末頃には満開になるの」
そして立ちあがり
「そっちも、そっちも一面に。とっても綺麗なの」
その瞳がキラキラと輝いている。
「すごーい。ステキねぇ」
言いながらあたしも立ちあがって、今はまだ土色でしかない向日葵畑を眺めた。