ひまわりの丘
庭の横を走る道路を挟んだ向かい側、その一面が向日葵畑だ。
先月、マモルオジサン達が種蒔きをした向日葵の芽が、やっと小指ほどに成長した。
「7月の末かぁ~」
あたしの今の一番の楽しみだ。
「ねぇサキさん、あれってなに? あのお家みたいなの」
畑の奥を指した。
「どれのこと?」
「あれっ あれ。ひまわり畑の向こうの、小高い場所にある、あれのこと」
向日葵畑は、農道である小道を挟んで左右に広がっている。
その小道を真っ直ぐ行った先がちょっとした丘になっていて、その上にちょこんと佇む小さな建物が見えた。
「あぁ、あれねぇ」とサキさんが微笑んだ。
「なぁに?」
「ひまわりの咲く頃には帰ってくるかしら?」
「え?」
訊き返すとサキさんは少女のような顔をして
「ヒミツ。お楽しみよ」と言った。