ひまわりの丘
照れたような困ったような顔をしてから、蒼太君が言う。

「彼女は、サキさんの曾孫の由那ちゃん」

そして今度はあたしに向かって

「ここのママだよ。キョウコさんの同級生なんだ」

「どうもヨロシクね」

「はい。初めまして」

あたしが頭を下げると、またママは目を細めた。


それから蒼太君は自家焙煎のコーヒーを。あたしはカフェオレとママお手製のシフォンケーキを注文して、おしゃべりをしながら待った。


「都会からこういった田舎へ来ると“なんにもない”だとか“つまんない”って言う人もいるけど、俺は全然そうは思わないんだ」

いつもよりもっと穏やかな顔の蒼太君。

「たまに東京(あっち)に帰るじゃない?
一晩も泊まったら、あぁ 早く帰りてぇなんて思っちゃうんだよね。どっちが地元かわかんなくなっちゃってんの」

そして笑う。

「それってわかるかも。
ここって、なんにもしてなくても落ち着くんだよね」

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