ひまわりの丘

「それで?」

彼が言った。

「え?」

「あんた、誰?」


サラっと放たれた、その言葉。
『あんた誰?』って、こっちが訊きたいところなのに……



「ただいまー」


玄関の方から物音がして、間もなく入ってきたのはサキさんと蒼太君だった。

あたしの心に沸き起こる安堵感と、もうひとつ。
どうしてかな? あたし、気まずいみたいなそんな気持ちになってる。

サキさんは、あたしの顔を見るより先に“上だけハダカ”の彼を見つけるなり笑顔になった。


「あら~もう着いてたの? 疲れたでしょう」

そして蒼太君も、珍しく不機嫌そうな口調で言った。

「空港に着いてからじゃなくて、まず日本に帰った時点で電話すれば?」

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