ひまわりの丘

リツコちゃんが奥の台所で洗い物をしているのが見えた。

あたしは、テーブルの上の空き缶を集めて立ち上がった。


「手伝ってもいい?」


隣に立って声をかけると最初は戸惑った顔をしたリツコちゃんだけど、すぐに、はにかむように笑って「ありがとう」と言った。

もう一度居間へ行き空いたお皿を集め台所へ戻ると、リツコちゃんの隣に隼太が立っていた。

ただ立っているだけなのに、ひどくふらついているのがわかる。


「りっちゃ~ん、トイレこっちだったあ?」


しかも、にやけてるし。

話しかけられたリツコちゃんは怯え、固まっている。


「ここじゃなくて、こっち」

「んあ?」

「トイレに行きたいんでしょ!」


二人の間に割って入ると、虚ろな目をした隼太があたしを見おろした。

視線を反らし背中を向けると、何も言わず後をついてきた。


ハタチの蒼太君の弟ということは、隼太だって未成年のはず。

だからどうとは言わないけど、お酒が弱いならそんなに飲まなきゃいいのに。

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