短編集*虹色の1週間
その様子は、澤木のところからもよく見えた。
「・・・当分は、診察の必要はなさそうですね」
燃えるゴミの日にゴミを持ってあげる心配も、しなくてよさそうだ。
にこっと微笑むと、今度こそ自宅に入った。
時計は8時30分を回っている。
「さて。少し遅くなってしまいました」
澤木は白衣に袖を通した。
今日最初の仕事。
澤木は、パソコンを開いて根岸敦子の電子カルテを開いた。
彼女の胃痛の本当の原因を、書き足しておこう。
私も、まだまだだな。
大抵の一般市民が、医者と呼ばれる人間に対して抱くイメージ。
それが、
・堅物
・高圧的で、なぜかエラそう
・「なんでも知ってます」的な態度
であるなら、澤木クリニックの開業医・澤木康平ほど、そのイメージとかけ離れた医者はいないだろう。
人をイメージだけで判断しては、いけないのである。
【月曜は燃えるゴミの日・完】