短編集*虹色の1週間


大抵の一般市民が、「医者」と呼ばれる人間に対して抱くイメージ。

それが、
・メガネをかけている。
・身長が高く、やせ型。
・色白。
・欧米に留学経験がある。
・住んでいる家は洋館。
・その家の中にはピアノがある。
・大型犬を飼っている。
であるなら、澤木クリニックの開業医・澤木康平ほど、そのイメージどおりの医者はいないだろう。

今日は月曜日。
大抵のサラリーマンが、
「チョーだりぃ。てか、通勤マジうぜぇ」
と心の中でぼやきながら駅に向かっている頃、澤木康平は家でクラシック音楽をBGMにコーヒーを飲んでいた。

クラシック音楽とコーヒー。
前述の「一般市民が抱く医者のイメージ」に追加しておこう。

もっとも、澤木はこうしたことを
「自分、医者だからな」
と意識して行なっているわけではない。
まぁ、言ってしまえば、地がそういう人間なのだ。

朝の8時17分。

「おっと。もう行かないと」
澤木が立ち上がった。


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