短編集*虹色の1週間
あっやばい!
今オレ、商品を食っちゃった?!
突然聞こえてきたスーパーTAKAIのテーマソングに、小宮山は一瞬仕事モードのスイッチが入ってしまった。
いや、待て。
ここは公園だ。
声のした方を振り向くと、公園の境界に植えられている隙間だらけの生垣の向こうに、古い小さな家が見えた。
歌声はその家の中から聞こえてくる。
薄暮れ時、ガラス戸を全開にして電気をつけているので、こちらからは茶の間がまる見え。ドリフの家族のコントができそうな勢いだ。
大きさの違う子どもたちが4人くらいで、テーブルを囲んで夕食をとっているように見える。
子どもたちはお行儀悪く、クチャクチャ食べながら大声で歌っている。
♪あなたのまちの~
スーパーです、タカ~イ~
名前はタカイが~
値段もタカイ~♪
子どもたちは自作の替え歌に大うけして、ゲラゲラ笑っている。
♪スーパー、タ、カ、イ~♪
「はいらっしゃい!高いよ高いよ~」
「ギャハハハハ!」
お、おい。
そんな歌をはやらせないでくれよ。
まぁ、オレも家でこっそり歌ってみたことはあるけど。
面白いのは、分かるけど。
その替え歌、仕事場ではご法度なんだから。
そのとき、家の外にあわただしく自転車が止まる音がして、誰かが家に入ってきた。
「ごめんごめん!遅くなっちゃった」
かん高い声の大人。母親だろう。
「大丈夫だよ、温めて先に食べてた」
一番大きな子どもが答えた。
母親がこちらを向き、茶の間の蛍光灯がその顔を照らしたとき、小宮山は驚いてチキンを落としそうになった。