短編集*虹色の1週間


小宮山は、食べかけのチキンをそっと紙袋にしまうと、立ち上がった。



生垣の向こうから、洗濯機が回る音が聞こえ始める。
オジサンオバサンが夕食にありつけるのは、いつになるのだろう。


小宮山は、自分の乏しい想像力を心から恥じた。

オジサンオバサンが
あんなに急いで、
あんなにがむしゃらに
チキンを詰めに来ていたのは。

ワイドショーが始まる前に家事を終わらせたいからじゃなかった。
ソファに寝転んでおいしいところをパクつくためじゃなかった。

買い物の後、夕食の準備までして仕事に行くためだろう。
食べ盛りの子どもたちに、少しでもたくさんお肉を食べさせたいのだろう。

その一心で、自分の口には一口も入らないフライドチキンを、あんなに一生懸命詰めていたのだ。

あの人は、
欲張り屋の『オジサンオバサン』なんかじゃない。

父親のいない子どもたちのために、
あるときは父親になり、
あるときは母親になり。


頑張り屋の『父ちゃん母ちゃん』だった。



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