短編集*虹色の1週間
「ワターシ、No Money!」
「ん?わたーしも、飲ーまねぇ」
あぁ、困ったな。
大家さんも、お金ないのか。
ジョージは、
「そんなこと言ったって、ないものは払えない」
ということを伝えるために、ポケットから財布を出して中を見せた。
「ノー、マネー」
ミサエはきょとんとした。
本当はお酒飲みたいのに、お金がないから飲めない、って言いたいのかねぇ。
そりゃぁ、ますます大変だろうねぇ。
「わかったよ、ちょいとお待ち」
ミサエは濡れ縁から急ぎ室内に入ると、香典返しにもらった小さな日本酒と茶碗を手に帰ってきた。
半ば強引にジョージに茶碗を持たせると、トクトクと酒をついだ。
「さぁ、これしかないけど、飲みなされ」
突然酒を手向けられたジョージは、もう何がなんだかさっぱり分からない。
こ、この液体はなんだ?
やまんばの秘薬?
その混乱に、ミサエの一言が拍車をかける。
「ワターシワ、アナータノ、オー、ヤー!」
大きく開け放った口から、入れ歯が今にも外れそう。
…ヒ、ヒェ~ッ!
これはもう、ジャパニーズ・ジョークじゃない。
ジャパニーズ・ホラーだ。