短編集*虹色の1週間
でも、これ以上は来るわけない。
ドアには「CLOSE」の札がかかってるし・・・
と美帆が心の中で結界を張り巡らせているうちに、ドアは開いた。
来客を知らせるドアの鐘が、カランコロン、と響いた。
店の中に、外の喧騒と暑い空気が入り込む。
・・・え?なんで?
驚きのあまり、美帆は言葉を失った。
汗だくの「サラ男」が、玄関脇の伸びすぎた観葉植物の向こうから顔をのぞかせている。
そこはもう店の中。
美帆と同じ空間だ。
洗顔後タオルを探している人に負けないくらい、びしょびしょの顔。
いかにも人のよさそうな笑顔。
「やってますかぁ?」
美帆は座っていたイスから飛び上がった。
簡単なことだ。
「やってません」
ただ一言そういえば、向こうは
「あ、そうですか」
と引き下がるだろう。
それだけで済むはず、だった。
なのに美帆の口から出たのは、全く別の言葉だった。
「はい、やってます」