短編集*虹色の1週間
・・・
エェェエ~?!
何言ってんの、あたし?
まだ19歳の美帆は、断り方を知らなかったのだ。
いや、年齢はこの際関係ない。
美帆は小さい頃から、なんであれ断るのが苦手だった。
「ミホちゃんのハートのシールとワタシのカエルのシール、交換して」
「ミポリン、掃除当番代わってよ」
「マルタ~、悪いけど500円貸してくれない?」
「出席とるとき、俺の分も返事しといてよ、ね」
などなど、「イヤ」と言えずにしてきたイヤなことは、数知れず。
でも気の弱い美帆にとっては、どんなにイヤなことも、断る気苦労よりは気が楽だった。
・・・それにしても。
断れなさ過ぎるぞ、わたし!
と、自分のふがいなさにショックを受けながらも、
「どうぞ」
と自分の座っていた席を譲る始末。
「あぁ、良かった」
サラ男は美帆の気も知らず、カバンをあちこちに引っ掛けながら譲られた席に向かった。