短編集*虹色の1週間
15分後。
「マスターの気まぐれ子猫ちゃんパスタセット」(美帆流)、かんせーい。
ナポリタンには、魚肉ソーセージと玉ねぎ、ピーマンはないからミックスベジタブルを入れた。
サラダはレタスをちぎり、玉ねぎを薄くスライス、色合いにミックスベジタブル。
アイスコーヒーはエクセラを小さじ2杯、水道水を入れて「溶けろ!」と念じながら箸でかき混ぜた。
…ミックスベジタブルの使用頻度がやたら高いが、マスターの気まぐれっていうことで許してもらおう。
「お待たせしました。マスターの気まぐれ…ムニャムニャセットでございます」
足さばきに気をとられてメニューの名前をど忘れしたが、なんとかごまかした。
「はーい、どうも」
サラ男は早速食べ始める。
はあ…とりあえず形は整った。
味はどうか知らないけど…
ほっとした美帆の耳に、サラ男がパスタをすする音が届いた。
ズズズッ。
モグモグモグ…ゴクン。
パリパリ…ゴクン。
ゴクゴクゴク…。コト。
サラ男の一挙手一投足が、静かな店内にいちいち響く。
咳払いをするサラ男。
しまった。BGMがかかってない。
美帆は慌ててカウンターに入ると、ユーセンのスイッチを入れた。