短編集*虹色の1週間
美帆はサラ男につられるように、扉を開けて外へ出た。
サラ男が歩いていく背中が見える。
来たときと同じように、一向に中身の減らないカバンを肩からぶら下げて。
でも。
その後ろ姿はさっきよりも、数段元気に見えた。
カバンの重さも何のその、背筋を伸ばし緩い坂道をぐんぐんと登ってゆく。
背中しか見えないけれど、サラ男が歩きながら、人の良さそうなあの笑みを浮かべているのが見えたような気がした。
ドアの表示を外から見て、美帆は苦笑した。
・・・やっぱり、「CLOSE」になってるよね。
あの人、相当おっちょこちょいな人だ。
あーあ、せっかく涼んでたのに。
いやな汗、いっぱいかいちゃった。
美帆の胸には、ちょっとした敗北感。
また断れなかった。
でも、どんどん小さくなっていくサラ男の後ろ姿を見て、美帆の胸に満ちていくのは別の感情だった。
自分の作ったパスタが、今、あの人を動かすエネルギーになっている。