短編集*虹色の1週間
医者と患者という共通点しかない二人には、それ以上特に話題もないので、また「通りすがりの近所の人」に戻ってそれぞれの道を歩き出す。
・・・いや、共通点がもう一つだけあった。
今日は月曜。
燃えるゴミの日だ。
そういうわけで二人は、徒歩3分の道のりを、それぞれゴミ袋を手に、並んで歩く格好になった。
「・・・」
澤木は、ちらり、と敦子のゴミ袋に目をやる。
別に、詮索好きなわけではない。
燃えるゴミの日は、週に2回、木曜日にもあるのだ。
4日間の一人暮らしにしては、敦子のゴミは不自然に多かった。
透明なビニール袋なので、中のゴミが一目瞭然だ。
根岸敦子のゴミ袋の中身。
こちらもまた、日常の生活とは結びつかないものが入っていた。
洋服類。
ブランド物のカバン。
携帯ストラップや「摩周湖」と書かれたペナント、提灯。
かごに入った造花。
ぬいぐるみ。
ディズニーランドで売っている耳のついたカチューシャ。
ハートのストロー。
などなど。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、小柄な敦子は腕を上げていないと、地面にひきずってしまう。
「あの・・・持ちましょうか」
「は?」
「あの、重そうですし。私が持ちましょう」
ここで、自分が持っているものと、澤木のそれの大きさの違いに初めて気づく敦子。
なぜか、ワハハ!と豪快に笑いながら、
「いいのいいの、ヘーキ!」
と澤木の申し出を丁重に笑い飛ばした。