短編集*虹色の1週間
そのことに気づいた小林は、反射的にジェイソンにすがりついた。
オバケじゃないなら、誰でもいい。
小林は、必死だった。
「ワラにもすがる思い」ならぬ、「ジェイソンにもすがる思い」だ。
「お願いします、助けてください!」
すがりついたジェイソンの肌から、暖かさが伝わってくる。
良かった、やはり生身の人間だ。
ジェイソンは、助けを求める存在(あるいは3秒で殺す存在)であるはずの警備員に助けを求められ、目をパチクリさせている。
「ど・・・どうしたんですか?」
流暢な日本語だ。
良かった、やはり普通の日本人だ。
ジェイソンに言葉をかけられ、小林は少しだけ落ち着きを取り戻した。
目の前にいるジェイソンはよく見れば、とても3秒で人を殺せるような猛々しさは感じられない。
「あ、あっちの教室から、ピアノの音が」
小林は、必死で説明した。
「お願いします、一緒に来ていただけませんか?」