短編集*虹色の1週間
二人は今、問題の5階の教室へ向かっている。
へっぴり腰で後ろをついていく小林に対し、ジェイソンは特に怖がる様子もなく、普通に階段を上っていく。
さすがジェイソン。頼もしい。
小林は尊敬の念を込めて、小林の背中を見た。
とても広く、大きく見える。
ジェイソンが、困ったような顔をして小林を振り返った。
「あの。なんか歩きづらいんですが」
気づけば小林が、ジェイソンの右手をしっかりと握っている。
小林は、首を強く横に振った。
「無理です!怖すぎて手が硬直してしまって、離せません」
「お願いします!見捨てないで下さい」
涙目で哀願する小林に、ジェイソンは手を離してもらうのをあきらめるしかなかった。
「わ、分かりました。じゃあ、きちんと歩いてください」
「それも無理です!腰が抜けちゃって」
「・・・」
二人が5階に着いたとき、小林がジェイソンに飛びついた。
「ほ、ほら!聞こえてきた!」
ピアノの音色が、廊下を伝って奥の方から聞こえてくる。