勇者に従え!
「ゆうしゃ? って確か、隣の村の?」
少し驚いたという表情で少女、メディカは聞き返した。
「ああ、そうだ。知ってるのか?」
「師匠から少し聞いた事があるわ。勇者が生まれる、勇者一族の村がリルコンのすぐ傍にあるって‥」
なるほどねェ、と頷くメディカを眺めていた勇者は、つい自分の村のアレコレを思い出して嫌な気分になった。
「それより‥君はこの店の者なのか?」
「アタシ?店の者では無けど、えっとー、‥ちょっと理由があってねぇ。今は店番任されてるのよ」
「だったら、塗りグスリを探してくれないか?ダニに刺されてしまって‥」
ほらココ、と勇者は長ズボンを捲って膝の裏の赤く腫れた部分を指差した。
「あららー‥こりゃまた随分ハデにやられたねぇ」
「泊まった宿屋がろくでもないトコだったんだ」
水道から葉っぱとミミズが出てきたし‥。
「ねー、勘違いしてるみたいだから言っておくけど、これはダニじゃないのよ」
吸魂虫ってムシで体に流れる魂気を吸うの。あんまりいっぺんに吸われすぎると死んじゃうからね?
「‥‥!」
空恐ろしい事をニッコリと告げられた勇者は思わず硬直した。
「フフ、今クスリ出してあげる」
メディカはそう言い残して店の奥へと引っ込んだ。